著者/いとうせいこう
出版社/新潮社
内容
庭のない都会暮らしを選び、ベランダで花を育てる「ベランダー」。そのとりあえずの掟は…隣のベランダに土を掃き出すなかれ、隙間家具より隙間鉢、水さえやっときゃなんとかなる、狭さは知恵の泉なり…。ある日ふと植物の暮らしにハマッた著者の、いい加減なような熱心なような、「ガーデナー」とはひと味違う、愛と屈折に満ちた「植物生活」の全記録。第15回講談社エッセイ賞。
感想
ドラマ「植物男子ベランダー」を見て、無事ハマりました。
今までエッセーは読んだことがほぼなかったので、時々生活感がにじむ描写に現実を感じ、とてもおもしろかったです。
いとうせいこうさんの本は初めて読みました。文章が好き!
元はいとうさんのホームページのコラムを単行本にしたもので、1つの話が短めで読みやすかったのもありがたかったです。
よく植物たちを別なものに例える表現が出てきます。その発想がおもしろくて楽しかった!作家さんだとそういう表現も普通にぽっと出てくるものなんですかね。
仕事の傍ら、ベランダや部屋に置いた数々の鉢に水をあげたり、後半から登場するメダカの世話をしていることは何気ない日常の、いとうさん以外にも多くの人がやっている行動の1つだと思います。
それを本で読むと、どこか遠いところでの出来事のように感じ、でも現実的な内容に「あ〜、わかるわかる!」と共感できるのが読んでいて不思議でした。本当にいとうさんが植物を大好きなことが伝わってきます。
花を咲かせるためには、成長を促すためには、と「植物たちのため」といって、いろいろな栽培方法があります。丁寧に世話をしてあげられればいいのですが、それは簡単なことではありません。
ベランダーのやり方はもっと単純なもので、結果的に植物たちの思うまま、なるがままにまかせた育て方。ある意味「自然な」やり方ともいえるのかな?と思いました。